今回は高齢者雇用の現状をもとに、
1. 高齢者が働く環境に必要なこと
2. 高齢者のスキルの活用
3. 再雇用就労で懸念されること
4. 高齢者のメンタル不全早期発見の着眼点
以上の4点について考えてみましょう。
高齢化社会における雇用の安定
世界に類を見ない高齢化社会が進行している日本。現役世代に税や社会保険の過重な負担を背負わさないためにも、働く意欲と仕事能力のある人ができるだけ長く働ける仕組み作りが求められています。1980年代以前は政策的にも55歳定年が主流でした。1980年以降定年は60歳に引き上げられ、2004年の法改正では65歳までの雇用確保措置を雇い主に義務付ける等、 国は高齢者就労を促進してきました。現在の改正高齢者雇用安定法で、65歳までの雇用確保義務は、定年後の再雇用(継続雇用)の形でも良いことになっており、8割以上の企業が高齢者には継続雇用で対応しています。
総務省統計局「労働力調査」によると、すでに60〜64歳では男性の7割強、女性の4割強が就労しており、高齢者就労は一般化してきています。それでも職種によっては60歳を超えると体力、健康、意欲などの点で個人差が大きく、画一的に65歳定年制にできないこともあるでしょう。個々人のニーズと企業のニーズに合った働き方が制度に盛り込まれることが望ましいと考えられます。それでは、高齢者雇用について、考えるべきことはなんでしょうか。
高齢者が働く環境に必要なこと
高齢者が働く環境で必要なことを、ハード・ソフトの両面から見ていきましょう。
■ハード面:
・再雇用(継続雇用)制度の整備
・人事処遇制度全般の見直し
・定年延長、退職金制度変更への配慮
・高齢者が働くうえで障害となる職場環境の改善、整備
■ソフト面:
・高齢者の役割を本人と職場に明確にしたうえで、高齢者の強みを活かす配置
高齢者ならではのスキルの活用
人の機微を巧みに察することが出来るのは、経験豊かな高齢者ならではのスキルでしょう。 これらをうまく活用しない手はありません。
■例:
*職場の専門知識、経験、技術の伝承力
*出世競争から離れた客観的な視点からの指摘、アドバイス力
*経験に基づいたコミュニケーション能力
*やり甲斐を感じられる力
*状況を俯瞰して見られる視点と将来を見据えた判断力
再雇用就労で懸念されること
ハード・ソフトの両面から高齢者就労を準備しても、懸念されるポイントはあります。
●コミュニケーション・ギャップ
価値観や考え方の違いを認め合ったうえで、社員間で程よい距離が保てるかがカギになります。若年管理職に高齢者の部下といった職場においては、若年管理職に「高齢者の経験から学ぶ姿勢がある」「高齢者の豊かな経験を資源として活用する意識がある」ことがポイントです。 そして高齢者にも「若年管理職のやり方への理解」「自らの役割を理解して範囲を超えない意識」が必要になります。
●中堅社員のモチベーション維持
定年延長による高齢社員の増加は、50代後半の社員に60代以降のキャリア形成を意識させ、働く意欲を高める反面、中堅社員がポストに就けないという事象を作り出します。社内外の資格取得によるキャリアプラン作成などの新しい仕組みが、モチベーション維持のために必要になるでしょう。
高齢者メンタル不全早期発見の着眼点
高齢者雇用が制度として順調に機能していたとしても、高齢者本人のメンタルに影響を与えることは複合的に起こります。不調を早期に発見するポイントを一つ上げるとすると、『仕事能率の著しい低下』になりましょう。一口に仕事の能率の低下といっても、加齢による健康、機能面か、メンタル面の問題かは判断し辛いものです。 チェックポイントは以下の4点があります。
●役割の変化 それに伴う(職場の邪魔になる)といった意識があるか
●内面の変化 自信やプライドの喪失があるか
●職業意識の変化 これまでの経験が活かせないといった憂うつ感があるか
●生活環境の変化 家族環境の変化 介護の問題などがあるか
この4点の変化の有無と、本人がその変化をどう受け止めているかがメンタルに影響を及ぼし、仕事能率の低下となって現れます。
それまでの人生経験が本人のスキル
高齢者の方々は、それまでの人生で順風満帆に過ごしてきたわけではなく、いくつもの山を越えてきた経験をお持ちです。その人生経験の豊富さがそのまま、今の問題解決に活用できるスキルになるのです。若手はベテランの経験に敬意を払い、ベテランは若手から新しい技術や考え方を学ぶ。両者の長所やライフスタイルがうまくかみ合い、お互いを補い合う関係を築いていけると、異年齢集団であることが強みになり、働きやすい職場作りにつながることでしょう。参考文献:「70歳まで働く 第2の就活」『週刊東洋経済』東洋経済新報社、2010年10月2日号
▼ この記事の著者

田中 貴世
シニア産業カウンセラー、日本産業カウンセラー協会認定キャリア・コンサルタント、日本オンラインカウンセリング協会認定オンラインカウンセラー、 家族カウンセラー協会認定家族相談士
子育て相談、保育士人材育成の仕事在職中にカウンセリングを学び資格を取得。転職支援センターのキャリアコンサルタントを経て、現在ピースマインド・イープでカウンセラーを務める。職場のメンタルヘルス、キャリア、家族関係、夫婦問題とカウンセリング分野は幅広い。「カウンセラーは相談者の伴走者」と考え、「出会い」「気付き」の中に生まれるエネルギーに心動かされる日々だという。


