著者:田中貴世(シニア産業カウンセラー)
ストレス検査の新たな枠組み
昨年7月、厚生労働省「職場におけるメンタルヘルス対策検討会」の検討報告書には、「労働者のプライバシー保護に懸念がある」として、健康診断時に行うストレス検査の義務付けは見送られました。その後9月に公表された報告書では、労働安全衛生法改正の必要性も含めて議論したうえで、早ければ2012年度からストレス検査の実施を目指すとしています。今回はその枠組みを、ストレス検査実施の流れから見ていきましょう。
ストレス検査の実施の流れ
【1】一般定期健康診断の問診に併せてストレス項目を検査*ストレス項目例:食欲の低下、感情の不安定さ、対人関係の問題 等
【2】担当医師(ストレス検査の結果確認を行った医師)が労働者に産業医等(就業上の措置について意見を述べる医師)による面接が必要かを判断。
【3】該当労働者は、事業者があらかじめ指定している産業医等との面接を受けることができるようにする。
【4】該当労働者は必要に応じて、自発的に又は産業医等との相談、勧奨により医療機関を受診する。診断結果を産業医等に提示(任意)
【5】産業医等が必要と判断した場合、該当労働者の同意を得て、事業者に対して労働者の就業上の措置について意見を述べる。また、労働者へ保健指導を行う。
【6】事業者は産業医等からの意見を参考に、就業制限などの措置を行う。
ストレス検査実施上の留意点
上のようなストレス検査がいずれ実施が義務化された際に、注意しなくてはならない事項がいくつかあります。
個人情報の保護
●医師は、労働者のストレスに関する症状、不調の状況及び産業医等との面接の要否等について、事業者には伝えない。●産業医等から、労働者の個人情報が事業者へ提供される場合、提供する情報の範囲と提供先を必要最小限と限定し、当該労働者の同意を得ること。
就業上の措置
●.産業医等から、労働者との面接結果を踏まえて事業者に対し、就業上の措置についての意見が述べられる場合、専門的判断に基づき、その内容を示したうえで、労働者の同意を得る。●就業上の措置が、職場の実態を踏まえたものになるよう検討されること。
不利益取り扱いの防止
●労働者がメンタル不調であることのみをもって、事業者が客観的に合理的な理由もなく労働者を解雇すること等の不利益な取り扱いがあってはならない。●事業者は就労上の措置を行う場合、健康管理の観点から適切な手順、内容を踏まえて実施する。
●あらかじめ労働者の意見を聴き、医師の意見の内容を労働者に明示し、労働者の了解を得るための話し合いを実施する。
●事業者が就労上の措置を行う場合、労働者の健康保持の目的を超えて不利益な取り扱いを行ってはならない。
関係者への期待
■担当医師への期待・労働者のメンタルヘルス不調を読み取り、産業医へつなげる技術
・ 産業医・人事労務担当者との連携
・ 事業所独自の体制や労働者支援施策の理解
●産業医への期待
・ ケース・フォーミュレーション(見立て・奨励の概念化)と治療計画の立案
・ 該当労働者と事業者が情報共有を必要とするとき
・ 個人情報保護に配慮したうえで、両者の調整をとる
●保健師等、産業保健スタッフへの期待
・ 労働者の身近な相談役としての役割
・ 労働者と産業医・事業者の橋渡しとしての役割
今後、ストレス検査実施をきっかけに、メンタルヘルス対策の体制整備が新たな段階へと推進していくでしょう。
参考資料:
厚生労働省労働基準局
「職場におけるメンタルヘルス対策検討委員会 報告書取りまとめ」
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000q5re.html
▼ この記事の著者

田中 貴世
シニア産業カウンセラー、日本産業カウンセラー協会認定キャリア・コンサルタント、日本オンラインカウンセリング協会認定オンラインカウンセラー、 家族カウンセラー協会認定家族相談士
子育て相談、保育士人材育成の仕事在職中にカウンセリングを学び資格を取得。転職支援センターのキャリアコンサルタントを経て、現在ピースマインド・イープでカウンセラーを務める。職場のメンタルヘルス、キャリア、家族関係、夫婦問題とカウンセリング分野は幅広い。「カウンセラーは相談者の伴走者」と考え、「出会い」「気付き」の中に生まれるエネルギーに心動かされる日々だという。


