著者:田中貴世(シニア産業カウンセラー)
●誰が何をフォローするのか
復職者の職場復帰後のフォローを考えるとき、復職者が休職した背景を知っておくことは重要な情報になります。ここでは、近年取り上げられている二つのタイプのうつ、
・「メランコリー親和型うつ病」と
・「非定型うつ病」(現代型うつ、新型うつ、若年性うつ、などと呼ばれています)
を取り上げて、タイプ別に復職後のフォローについて考えます。職場は診断、治療の場ではありませんから個人にレッテルを張るのではなく、復職者が職場に再適応するためにどのような支援が必要かを考える参考にしてください。

●共通のフォロー・ポイント
二つのタイプに共通しているのは、医療に関するフォローを主治医との連携、情報共有をしながら産業医、健康管理スタッフが行うこと。業務内容や仕事配分を職場上司が本人と相談しながら職場再適応をフォローする、の2点です。人事労務担当者は両者からの情報を客観的に整理、検討できる立場にあるので、復職が問題なく進んでいるかをチェックし、上司や職場が変更になっても、年単位での長期的なフォローができます。
復職後数カ月は、数週間〜1カ月に1度くらい復職者と面談し、再発の兆しをチェックします。半年間安定しているようであれば、まずは落ち着いたと考えてよいでしょう。それでも1年間は経過を追いましょう。まれに上司も気づかないうちに残業時間が増えてしまうこともありますから、人事労務担当者が先に気付くことで再発の予防ができます。
●タイプ別フォロー・ポイント
ご紹介するタイプ別フォロー・ポイントは、医療的な見地からのものではなく、良好な職場復帰をされた方の多彩な経過情報を整理したものです。
【メランコリー親和型うつ】
上司が復職者の焦りの軽減と業務ペース配分を調整する復職後のキーパーソンは復職者本人が了解すれば上司が好ましいでしょう。周囲に迷惑をかけているのではといった気持ちは、上司からの「みんな心配していたが、君が復職して良かった。」といった親和感や仲間意識の表明をうけて安心できます。「少しずつ慣らしていけばよい」との声かけと業務調整は上司ならではのフォローになると思います。 復職者が焦りの気持を軽減し、仕事のペースを取り戻していく過程を実感できるために、上司のフォローは欠かせません。
【非定型うつ】
復職者と良好な関係が持てる職場内第三者が、主体的取り組みを支援する詐病や怠業との区別が難しい事例があることを背景に、職場管理者である上司に理解されにくいと復職者本人も感じることが多いようです。それであればキーパーソンは復職者本人が信頼して話しやすい人にすればよいと思います。例えば人事労務担当者が面談で、これまでの復職者の事例など交えて状況判断を提示する。今後のプランを話し合うといった本人参加型の関わりを通して、復職の成功に主体性を持って取り組むことを支援する。上司は作業を達成感のあるものにして、必要な情報を共有することをルールにしてそれを復職者に守らせる。個人の資質や性格といったことでなく、行動に焦点を当てた支援とできたことへの評価が客観的に行われることが、復職成功のカギになると思います。
メンタルヘルスの不調によって休職になるケースは、人事労務担当者が情報を知り得る頃には問題が複雑に絡み合っていることや、症状が重篤になっていて治療を最優先に考えなければならない、といったこともあるでしょう。今回見てきた休職〜復職への流れは、どのポイントから始まってもその時その時にできることがある、との考えをベースにしています。人事労務担当者の方々の、日頃のご苦労に思いを馳せつつ一区切りといたします。
参考文献:
・「医療機関におけるメンタルヘルス・ケアの実践」、『産業精神保健vol.17』、日本産業保健推進学会、2009年
・松原六郎、五十川早苗、齊藤忍「職場のうつ 対策実践マニュアル」星和書店、2010年
▼ この記事の著者

田中 貴世
シニア産業カウンセラー、日本産業カウンセラー協会認定キャリア・コンサルタント、日本オンラインカウンセリング協会認定オンラインカウンセラー、 家族カウンセラー協会認定家族相談士
子育て相談、保育士人材育成の仕事在職中にカウンセリングを学び資格を取得。転職支援センターのキャリアコンサルタントを経て、現在ピースマインド・イープでカウンセラーを務める。職場のメンタルヘルス、キャリア、家族関係、夫婦問題とカウンセリング分野は幅広い。「カウンセラーは相談者の伴走者」と考え、「出会い」「気付き」の中に生まれるエネルギーに心動かされる日々だという。


