著者:田中貴世(シニア産業カウンセラー)
1年先、いいえ半年先に起こることさえ、読みにくくなっている現代です。
でも、未来は誰にも保障できないものです。それでも新しい年の始まりには、「今年はこんな年にしたい」と考えることもあるでしょう。
そんなときのヒントになればと思い、今回は始めに、問題解決的アプローチの3つの行動ポイントをお伝えしてから本題に入ろうと思います。
◆問題解決的アプローチ・3つの行動ポイント
●これまでの実施結果がうまくいっていることは変えようとしない。
●新しく実施してうまくいっていることは、継続して経過観察。
●実施してうまくいかなかったら、これまでにやっていない新しい行動を実施。
今回は「産業医、健康管理スタッフとの連携」についてご紹介します。
上記の3つのポイントにならって、これまでの取り組みを振り返り、昨年うまくいっていたこと、出来ていたことは継続し、経過観察も怠らず、より良い関係づくりのためのアイデアも実施できる年になると良いと思います。
健康管理スタッフとの連携
保健師や看護師、カウンセラーなどを配置している事業所では、そのスタッフが労働者の相談の窓口になっていることもあるでしょう。相談する側から見れば、日ごろ接触のしやすい健康管理スタッフは身近に感じられます。心理的なストレスが体の不調として表現されるケースでは、健康診断の結果に表れてくることもあります。そこで集まる情報を人事担当者がメンタルヘルス対策に活かすためには、個人情報保護を優先した上で情報を共有するためのルール作りをしておくことが必要になります。
◆配慮ポイント:
1.情報を知り得るスタッフと、人事担当者の信頼関係の構築。
2.個人情報の中から、人事担当者として知りたい内容、相談者本人が人事に知らせておくことで本人の健康状態を改善することに有効な内容を特定すること。
3.(2)を健康管理スタッフと共通理解する。
4.情報管理、保管、廃棄、情報開示請求への対応についてあらかじめ決めておく。
5.相談者本人と開示する情報の特定と開示先を話し合い、了承を得ることを前提とする。
(自傷他害など、緊急な場合は本人承諾が必要ない場合もあり得るので、その場合もルール化しておく)
6.安全衛生委員会や労働組合との話し合いで了解を得る。
以上のポイントに配慮し、現状に即したルール作りをお勧めします。
健康管理スタッフとの協力が可能になると、メンタルヘルス不調の予防、早期発見が促進できるでしょう。
産業医
メンタルヘルスに対応できる産業医の配置は、効果の高い対策になります。産業保健スタッフ(保健師、看護師)や過重労働面談のできる産業医を紹介、派遣してくれる企業もあるようです。メンタルヘルス対策で重要な役割を果たすのが産業医と言えるでしょう。
常時50名以上の労働者を使用している事業所では、労働安全衛生法によって産業医の選任が義務付けられています。また、少なくとも月1回の作業場巡視、その際労働者の健康障害を防止する必要ありと認められる点については、防止のための措置を講じなければならないとあります。
産業医と良好な関係を維持しつつ、自社と労働者の利益を守り、そのために専門知識を提供してもらうことを原則としましょう。
そのためにも、コミュニケーションの質と密度はどうあることが望ましいでしょうか?企業と産業医の関係を前提に考える為には、担当者としても産業医と取り交わした契約書の中の、産業医の業務内容を知っておく必要があります。実情に沿って変更が必要な場合は、契約更新時に交渉することも必要になるでしょう。
◆産業医 業務内容のチェック::
1.自社のリスク管理とCSR(企業の社会的責任)の観点から、
月に1度の出社が果たされているか。
2.職場巡視と過重労働面談は実施可能か。
3.自社の業務内容の理解と、リスクヘッジについて興味関心を持った関わりをしているか。
4.メンタル不調者への理解、休職復職時の判定、当該労働者の主事との連携、業務上の指示、
意見書など専門知識を活かしての協力が可能か。
上記した項目は、産業医一人でできることではありません。業務内容を理解するためには、人事担当者の適切な説明が必要でしょう。復職者へ適切な業務上の指示を出すためにも、休職した時の職場の状況や、戻る職場の現状(勤務軽減の状態で受け入れることができるか等)の情報が必要になるでしょう。
人事担当者は、現場と産業医をつなぐ橋渡しの役割を担っているように思います。また、現場で起こる問題を通して、人事担当者と産業医が互いに学び合う姿勢が、良好な関係の維持と問題解決に向けての連携の強化につながるのではないでしょうか。
▼ この記事の著者

田中 貴世
シニア産業カウンセラー、日本産業カウンセラー
協会認定キャリア・コンサルタント、日本オンラインカウンセリング協会認定オンラインカウンセラー、 家族カウンセラー協会認定家族相
談士
子育て相談、保育士人材育成の仕事在職中にカウンセリングを学び資格を取得。転職支援センターのキャリアコンサルタントを 経て、現在ピースマインド・イープでカウンセラーを務める。職場のメンタルヘルス、キャリア、家族関係、夫婦問題とカウンセリング分野は幅広 い。「カウンセラーは相談者の伴走者」と考え、「出会い」「気付き」の中に生まれるエネルギーに心動かされる日々だという。


