著者:田中貴世(シニア産業カウンセラー)
今回は休職期間中の支援体制について取り上げます。 職場復帰支援を考える上で、休職者の休職期間の過ごし方が重要であることは言うまでもありません。診断書の提出とともに出勤してこないまま有給休暇を取得し、そこから病気休暇、休職、と気付いたら進んでしまっていた、ということも起こり得ます。 その休職期間を休職者が職場復帰に向けて、有効に過ごす指標として、人事や労務担当者ができる支援について考えていきましょう。
STEP1:休職初期・・・休職中の連携方法の決定
●「見える化」で連携把握職場側の産業医、人事・労務担当者、職場管理者、直属上司と休職者、その家族といった関係者の連携方法について全員で確認しておきます。口頭の説明だけでなく、連携図などで「見える化」しておくと、理解力や集中力が低下している休職者、夫や妻、息子や娘に起こったことに戸惑っている家族も、より理解しやすくなります。その結果、サポート体制が整えられた中で、本人も休職初期に安心して休養できることに繋がるでしょう。
●情報相互交流の一本化
職場側の窓口を一つに絞ります。直属の上司、職場管理者、人事・労務担当者と言った方が考えられます。その際、入手した個人情報をどの範囲の関係者が共有するかは、休職者本人の同意を得て確認しておくことが大切です。休職初期で、休職者本人が職場と連絡がとりづらければ、家族の代行も考えられます。本人が回復して職場と直接やりとりできるようになるまで、家族に休職中の様子を伝えてもらうことを検討しても良いでしょう。
●定期連絡の間隔、連絡方法の検討
職場側窓口と休職者側の連絡できる人が誰になるかで、連絡の間隔は決まってくると思います。連絡方法(電話、メール等を活用)と、職場側、休職者側、どちらからアクションを起こすのか、この2点を決めておくことで、連絡が途絶えてしまうことを回避しておきましょう。
上司、人事・労務担当者、産業医の方々も休職者対応だけが仕事ではありませんから、無理のないように決めることが長続きのコツです。最近は上司自らがメンタル不調で休職を経験しているというケースがあります。休職者への理解があることで、安心できることはプラスな面として考えられます。反面「自分の時は会社から連絡が来ることがストレスだったから、連絡は一切しません。君が判断して会社へ報告してください。」と言われ、連絡しにくくなったと言う休職者の声も聞きました。両者で話し合って、決める手間を惜しまないことをお勧めします。
STEP2:休職中期・・・病状、症状等経過の把握
初期の休養が十分にできれば、苦痛やストレスが緩和されてきている時期を中期として考えていきます。心身の変化が自覚され、活動性が上がったり気持ちの落ち着きを感じられたりしている頃です。本人にとっては「焦ることなく職場復帰に向けて歩を進めてほしい時期」ですし、職場側としては「今後の見通しのための情報を押さえておくこと」が、職場復帰支援につながります。以下の情報を本人と職場側、産業医が共有していると良いでしょう。

定期連絡を短時間で有意義に進めるために、毎回同じ質問をすることも有効です。 質問される項目は休職者も意識して過ごすようになりますから、生活リズムの改善や安定、主治医との良好な関係作りに役立ちます。
STEP3:休職後期・・・職場復帰の判断に向けて
職場環境への再適応 二つの可能性1.一時的に業務を継続できないほど心身にあらわれていた症状が、投薬などの治療によって適応力を回復し、休職前とほぼ同じ能力の持ち主になって職場復帰できると判断される。
●この場合には休職にいたった前後の不適応状態の背景にあるトラブルや、その後遺症についてどのような処理を行うかがとても大切です。休職前の適応した状態と、復職できるまでに回復した状態との間に連続性を維持できる環境調整が必要になるでしょう。
2.本人が休職前に比べて、適応能力がより低い水準までしか回復できていない状態のまま、復職を強いられる、本人が希望する、主治医が職場復帰を許可する。 ●この場合は、職場に復帰しながらリハビリテーションの過程を継続できる職場環境を模索する必要があるでしょう。本人のできる能力に応じた役割を準備し、保護的な対人関係づくりをして職場再適応を図ることが必要になります。
このどちらの場合にも、安全衛生委員会など本人を交えた複数の関係者による検討の場が必要です。相互の要望や期待に100%応え得る状況はありえないにしても、関係者の納得感を目指し醸成するコーディネーターの役割が、人事・労務担当者には求められています。
次回は、復職の判断とその後のフォローについて考えます。
参考文献:
・「これだけは知っておきたい〜アセスメント」『精神科臨床サービス』星和書店、2001年第1巻2号
・小此木啓吾、深津千賀子、大野裕『心の臨床家のための 精神医学ハンドブック』創元社、2004年
▼ この記事の著者

田中 貴世
シニア産業カウンセラー、日本産業カウンセラー協会認定キャリア・コンサルタント、日本オンラインカウンセリング協会認定オンラインカウンセラー、 家族カウンセラー協会認定家族相談士
子育て相談、保育士人材育成の仕事在職中にカウンセリングを学び資格を取得。転職支援センターのキャリアコンサルタントを経て、現在ピースマインド・イープでカウンセラーを務める。職場のメンタルヘルス、キャリア、家族関係、夫婦問題とカウンセリング分野は幅広い。「カウンセラーは相談者の伴走者」と考え、「出会い」「気付き」の中に生まれるエネルギーに心動かされる日々だという。


