著者:田中貴世(シニア産業カウンセラー)
高まる過重労働対策の必要性
9月10日は「世界自殺予防デー」、そして9月10日〜16日は「自殺予防週間」だったことをご存知でしたか。警察庁のまとめによると、2009年1月〜8月の全国の自殺者数は、過去最悪だった2003年に匹敵するペースだと発表がありました。そして、産業界においてもストレスや過労を原因とする自殺が深刻化しています。2009年6月8日に厚生労働省が発表した2008年度のデータによると、過労を原因とする脳・心臓疾患で労災を認定された377人のうち、「過労死」の認定者は158人で、2002年度に次いで2番目に多いものでした。さらに、長時間労働が主因とされた人が361人いました。この中には、厚労省が「過労死ライン」としている1か月平均の時間外労働時間80時間を超えて、100時間以上が207人、160時間以上は24人いたと発表されています。また、過労を原因とする脳・心臓疾患だけでなく、過労や職場を原因とする健康障害や精神障害についても深刻化しています。2009年6月8日に厚生労働省が発表した2008年度の同データによると、精神障害等による労災認定者数は269人で、前年度より1名多く過去最高でした。この中には、1か月平均の時間外労働時間100時間以上は85人、160時間以上は20人いたと発表されています。(図1参照)

長時間労働者に対する面接指導
厚生労働省が改正労働安全衛生法(平成18年4月施行)によって、事業者に長時間労働者を対象にした産業医による面接指導の実施を義務付けたのも、メンタル不調者の早期発見によって、労災認定者数を減らすことに留まらず、職場環境の改善につなげようとの思惑があったからではないでしょうか。そこで面接指導の概要を以下にまとめてみました。面接指導の概要
1.対象者・リスクの高い労働者:1か月に100時間を超える時間外労働を行い、疲労蓄積があり、面接を申し出た者(強制義務) ・リスクのある労働者:事業場が自主的に定めた基準に該当する者(努力義務) ※強制義務と努力義務を理解して、事業所内で周知させるためにも基準を明確にする必要があります。
2.産業医による面接指導
・疲労蓄積状況の把握
・メンタル面のチェック
・把握結果に基づく指導
※労働者のメンタル不調が業務に影響を与える場合や、労働者の健康と安全を守る事業者の安全配慮義務に抵触する場合など、産業医や会社指定医との面談によって休職の措置をとるなど、事後措置につなげることが必要になります。
3.事後措置
・産業医による事後措置に関する意見徴収
・事業者による面接指導の結果を踏まえた、休暇付与、作業の軽減等の必要な事後措置
※この段階でも、人事担当者としては労働者本人、産業医、事業所監督者など関係者との情報の共有、連携が必要になると思います。
4.産業医などへの支援
・産業保健推進センターによる相談受付けや情報提供
・面接指導マニュアルの提供や研修
※産業医が必ずしもメンタル不調に詳しいとは限りません。過重労働面談はメンタル不調を予防するためのシステムとしては、重要なポイントですから、人事担当者自らが産業保健推進センターの情報を収集し、産業医に提供する、研修に誘って一緒に受けるなどの計画を考えてみてはどうでしょう。
5.小規模事業者への支援
・地域産業保健センターの登録産業医による面接指導の実施
※常時使用する労働者の数が50人未満の事業所については適用外とされていた期間も、平成20年3月31日を持って終了しています。小規模事業者も改正労働安全衛生法による、長時間労働者を対象にした産業医による面接指導実施の義務を負わなければなりません。そのために有効な資源は積極的に活用しましょう。
事業所の規模に関わらず、労働安全衛生法に基づく面接指導は、過重労働による健康障害を防止するための対策として、人事担当部署が認識し社内に周知し、健康管理部門や産業医との協力のもと推進していかなければなりません。
次回は、安全衛生委員会との連携や、産業医とのより良い関係について考えてみたいと思います。
▼ この記事の著者

田中 貴世
シニア産業カウンセラー、日本産業カウンセラー協会認定キャリア・コンサルタント、日本オンラインカウンセリング協会認定オンラインカウンセラー、 家族カウンセラー協会認定家族相談士
子育て相談、保育士人材育成の仕事在職中にカウンセリングを学び資格を取得。転職支援センターのキャリアコンサルタントを経て、現在ピースマインド・イープでカウンセラーを務める。職場のメンタルヘルス、キャリア、家族関係、夫婦問題とカウンセリング分野は幅広い。「カウンセラーは相談者の伴走者」と考え、「出会い」「気付き」の中に生まれるエネルギーに心動かされる日々だという。


