著者:田中貴世(シニア産業カウンセラー)
前回は若年層のキャリアとメンタルヘルス対策について取り上げました。
今回は、ミドル層といわれる40〜50代社員が抱えるキャリアの問題に焦点を当てます。 企業がミドル層社員との関係に良好な循環を生み、各人の仕事の満足度が高まることで、モチベーションが維持される・・・そのような状況を築くため、ミドル層の抱えるキャリアの問題を十分に把握することが大切です。
ミドル層が抱えるキャリアの問題
1.キャリアを主体的にデザインしきれない辛い状態これまで、自分のキャリアをコントロールできると手ごたえをつかみかけていたミドル層にとって、大きな障害となるのが 吸収、合併による企業組織の再編成や、事業効率化を目的に行われる構造改革などです。このようなことがあった際、ミドル層の社員は、手にしていた力を手放すような喪失感に見舞われます。
2.働き方の変化、キャリアチェンジが求められるとき
ミドル層になると管理職の役割を求められます。管理者になれば、まず仕事の範囲と量に大きな変化が生じ、これまで積み上げてきた業務キャリアとは別の分野に異動することも起こります。また、組織変更に伴い部下がいなかったり、逆に部下が全員派遣社員だったりと、大きな意識変化を求められることもあるでしょう。他にも、年下の上司の下で働くといった環境では、柔軟な思考が求められます。
3.育成という役割
自身も会社からより高度な成果を求められながら、若い世代への積極的なマネージメントも要求されるのがこの世代。若手育成は長期的な視点での取り組みが必要で、自分がやってしまった方が早いと感じいらだつこともあるでしょう。
これらの問題の解決に向けて、良好な循環を生み出す「要素」とは一体何でしょうか。
良好な循環を生み出す要素:期待・能力・貢献
企業の「期待」にこたえて成果を出すことと、その役割を担うために必要な「能力」の維持、結果としての「貢献」。この3つの手応えを感じているミドル層に、問題は少ないものです。仕事に対する満足度の高い人は、業務上思いがけないアクシデントに見舞われても、豊富な経験から対処方法を導き出すことができます。豊富な経験を現在の仕事に活かすことができる、これこそが、ミドル層が仕事へのモチベーションを維持するために必要なことです。ミドル層がキャリア変化を余儀なくされた節目で、メンタル不調を起こさないために、企業ができることは何でしょうか。

いいキャリアとは?
金井嘉宏氏は著書「働く人のキャリア・デザイン」の中で、いいキャリアを歩む要素の一つとして「個人のニーズと組織のニーズがうまくマッチングされたキャリア」を挙げています。自分の望むものを通すだけでは上手くいくとは限らないが、かといって組織の要望に自分の生き方を合わせるだけでは、自分らしさが消失してしまう。両方の声を聞いていないといいキャリアを歩むことはできない、と書いています。
いいキャリアを歩んでいる社員が増え、それを企業の人事戦略にしている会社も増えるよう期待しています。
参考文献:金井嘉宏「働くひとのためのキャリア・デザイン」PHP新書,2002年
▼ この記事の著者

田中 貴世
シニア産業カウンセラー、日本産業カウンセラー協会認定キャリア・コンサルタント、日本オンラインカウンセリング協会認定オンラインカウンセラー、 家族カウンセラー協会認定家族相談士
子育て相談、保育士人材育成の仕事在職中にカウンセリングを学び資格を取得。転職支援センターのキャリアコンサルタントを経て、現在ピースマインド・イープでカウンセラーを務める。職場のメンタルヘルス、キャリア、家族関係、夫婦問題とカウンセリング分野は幅広い。「カウンセラーは相談者の伴走者」と考え、「出会い」「気付き」の中に生まれるエネルギーに心動かされる日々だという。


