著者:下村 洋一(医師、日本医師会認定産業医、労働衛生コンサルタント)
海外赴任者を待ち受けるもの
気候、風土、言語、考え方、社会の慣習など、勝手の違う異文化のなかで、外国の人達を相手に自分をコントロールしながら仕事や生活をする海外赴任者。その数は今や50万人を超え、年々増加しています。しかし、海外赴任にはそのような大変なプレッシャーによっておこる、海外不適応症状がつきものです。
海外不適応症状には、身体症状が見られることが多くあります。これは、悩みを言語的に十分訴え表現する機会の少ない海外生活で、一種の言語遮断状況にあるため、身体の不調として表現されやすいのです。ほかにも言動に特徴が表れる場合もあり、たとえば、衝動買い、過食、妄想などもその一つです。症状の段階としては、移住期→不満期→諦観期→適応期→望郷期というパターンがあり、担当者はこれを把握した上で、海外赴任者の状態変化を敏感に察知しなくてはなりません。
そんな海外赴任者の健康管理は、まず、自国にいる段階で、産業医や主治医に海外赴任ができる健康状態かどうかを確認することから始まります。主治医や産業医から必要なアドバイスや予防接種を受けること、赴任地の医療、健康管理に関する情報収集を行うこと、携行品や心の準備をすることも大事です。また、現地における感染症などの病気予防の心得や医療システム、医薬品などについても、あらかじめ情報を得ておくと安心です。
現在、労働者厚生福祉機構では海外勤務健康管理センター(JOHAC)という機関を設けており、海外赴任者及びその家族の方々のための健康管理を総合的にバックアップする役目を担っています。詳細はこちら(外部リンク)
しかし、メンタル面での早期発見はとても重要です。もし海外での入院や治療が長引けば、莫大な出費が予想されます。担当者は海外赴任者と連絡を密にし、メンタル不調の可能性のある社員は早めに帰国させるといった臨機応変な対応が必要でしょう。
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参考文献:福西勇夫『現代のエスプリ 異文化ストレスとの遭遇』至文堂、2001年
▼ この記事の著者

下村 洋一
医師、日本医師会認定産業医、労働衛生コンサルタント
日本大学医学部卒業後、駿河台日本大学病院内科に勤務。東京都がん検診センター消化器科での勤務を経て、銀座菊池病院、京王電鉄診療所と内科医長を歴任。その後、京王電鉄グループ専属産業医となる。1997年には京王百貨店診療所所長を務め、2000年に労働衛生コンサルタント事務所を開業。現在では、大手企業や中小企業の嘱託産業医を多数務める。


