著者:下村 洋一(医師、日本医師会認定産業医、労働衛生コンサルタント)
今回は、【働く女性の健康管理】にスポットを当て、女性特有の健康問題を理解し、企業と女性個人、それぞれが改善できることについて考えてみましょう。
●女性に配慮した健康管理制度
女性は男性に比べお酒・たばこ・職場のストレスの影響を受けやすく、糖尿病やうつ病になると予後が悪いことが知られています。しかし、会社の職場環境や社風、健康診断や健康管理は男性中心の内容で、未だ女性のニーズには合っていない事業所が多いのが実状です。そういった環境のままでは、今後がん、心臓病、うつ病といった健康上のトラブルを抱える働く女性が増えることは間違いありません。女性社員に対する健康管理の充実が求められます。女性の健康管理に対応するためには、女性特有の病気やストレスを理解する必要があ ります。女性の多い職場であれば、女性を健康管理の担当者にする、女性の産業医を選任する、というような工夫もあるでしょう。 「3食しっかり食べる」「菓子や果物に偏らない」「休日に遊びすぎない」「私生活のスト レスを職場に持ち込まない」「女性であることに甘えない」「美容と健康は別問題」と いった健康教育を徹底し、婦人科系のがん検診を充実させることが、女性社員の健康管 理のポイントです。
●セクハラ問題
昨今、セクハラが原因で精神害に罹患したと主張する、女性社員が増加しています。 会社は雇用機会均等法によりセクハラ防止に必要な雇用管理上の配慮義務を負っており、労災認定の時、評価対象になる可能性があります。起きた後の職場の対応が適切でない場合は、企業の責任を追及される可能性があることを忘れてはいけませ ん。そのためにも、男性管理職に対するセクハラ防止教育は、女性のメンタルヘルス対策を進める上で重要です。
●複雑な体調の理解
女性社員の方で、特に家庭をもつ方は、私生活に於いて妻・母・嫁といった多くの役割を担っています。出産・子育て・介護などを通じて、仕事と生活のバランスは微妙に変化し、 また、性ホルモンの影響によって感情が変化しやすい、という特徴もあります。さらには、妊娠、月経異常、不正性器出血、月経困難症等、月経異常、更年期障害、貧血、便秘、セクハラによるストレスといった、男性の管理職には理解しにくい健康上のトラブルが多く出現しやすいのも事実です。
そのため、仕事を持つ妊産婦や、子どもの育児や看護もこなすママさん社員に対しては、勤務時間の軽減、通勤緩和等の措置といった配慮が雇用者に義務づけられています。
●行動・作業によっておこる健康障害
他にも、そのような家庭を持っている女性社員には、家事や育児の負担も重い上に、肩が弱く、手首が細いため、疲れ目、肩こり、腱鞘炎といったコンピューター作業特有の症状がでやすいという問題もあります。 女性のパートタイマーは、仕事ではなく、家庭を中心に一日の予定を立ているため、 家事・育児・介護などと時間に追われて行動する傾向があります。よって、通勤中に思わぬ事故を起こす方が多いのです。女性の健康管理については、まだまだ予防・改善・対策が必要なのではないでしょうか。
▼ この記事の著者

下村 洋一
医師、日本医師会認定産業医、労働衛生コンサルタント
日本大学医学部卒業後、駿河台日本大学病院内科に勤務。東京都がん検診センター消化器科での勤務を経て、銀座菊池病院、京王電鉄診療所と内科医長を歴任。その後、京王電鉄グループ専属産業医となる。1997年には京王百貨店診療所所長を務め、2000年に労働衛生コンサルタント事務所を開業。現在では、大手企業や中小企業の嘱託産業医を多数務める。


