著者:下村 洋一(医師、日本医師会認定産業医、労働衛生コンサルタント)
「快適職場」とは、一言でいえば疲労やストレスを感じることの少ない、働きやすい職場のことです。社員は、生活時間の3分の1を職場で過ごしていますので、会社は社員の生活の場とも言えるでしょう。その生活の場が暑すぎたり、寒すぎたり、汚れていたり、身体に過度に負担がかかる作業であったり、人間関係が良くない場合には、不調の原因になってしまいます。健康作りを進める上で、職場環境を改善することはとても大切です。今回は、その職場環境の改善施策の中でも、とくに効果的だといわれている「4S活動」と「社内禁煙」についてお伝えいたします。4S活動の推進
職場環境の改善施策の中で、4Sは特に重要なテーマです。安全衛生は4Sに始まり、4Sで終わると言われます。4Sとは「整理」「整頓」「清掃」「清潔」の頭文字をとった言葉です。4Sを推進すれば、不要物が減り、職場は整理整頓された状態になり、有効な時間や業務、スペースが広がります。接触・落下事故が減り、避難経路は確保されて職場は安全になります。見た目もすっきりし、従業員のストレスも少なくなります。デスクの4Sを徹底して作業空間を広くすれば、VDT(コンピューターディスプレイなどの表示装置)を使用した作業による肩こりや疲れ眼も改善されるでしょう。メールの4Sも徹底し、PC内のデータフォルダもしっかり整頓すれば残業も少なくなるはずです。4Sの目的は、物と時間を整頓して、快適で残業の少ない職場を作ることです。作業効率を高め、時間の4Sに繋げ、時短を進めれば立派な過重労働・メンタルヘルス対策になります。4Sは簡単に出来て費用のかからない心の健康作りと言えます。不況時こそ徹底的に4Sに取り組むべきではないでしょうか。社内禁煙の推進
社内禁煙は効果の確実な快適職場作りです。タバコには、ニコチンだけではなく100種類以上の有害物質が豊富に含まれています。喫煙は癌やいろいろな病気の直接・間接的な原因であることは疑いの余地はありません。喫煙は周囲の人にも悪影響を与えることが知られるようになり、ビルの高層化と空調設備の普及により、窓を開けられない職場が増えて、職場の喫煙対策に関する関心が高まっています。分煙や節煙といった対策でも効果はありますが、これらの対策だけでは不十分なこともあります。社内禁煙を実行すれば、効果はすぐに現れます。風邪をひく人が少なくなり、急な休みがなくなります。喫煙者離席が少なくなり、作業効率が高くなって、過重労働対策にも繋がります。会社からからニコチンの匂いが抜け、非喫煙者のストレスが少なくなり、作業環境も改善され、社員間のトラブルも減少します。長期的にみれば、がんや心臓病といった病気が少なくなることは明らかです。会社のイメージアップに繋がり、タバコの嫌いな優秀な社員を集めやすくなることもあるでしょう。快適職場づくりは、単純でわかりやすいものほど効果があります。特に4Sと社内禁煙は、費用もかからず、健康づくりに絶大な効果があります。ぜひ衛生委員会等で議論して、できることからはじめ、快適職場を作っていきましょう。
▼ この記事の著者

下村 洋一
医師、日本医師会認定産業医、労働衛生コンサルタント
日本大学医学部卒業後、駿河台日本大学病院内科に勤務。東京都がん検診センター消化器科での勤務を経て、銀座菊池病院、京王電鉄診療所と内科医長を歴任。その後、京王電鉄グループ専属産業医となる。1997年には京王百貨店診療所所長を務め、2000年に労働衛生コンサルタント事務所を開業。現在では、大手企業や中小企業の嘱託産業医を多数務める。


