著者:下村 洋一(医師、日本医師会認定産業医、労働衛生コンサルタント)
うつの治療法
症状が軽くても内因性うつ病と分かれば、できるだけ早期に心理的休息に入ることが必要です。早い時期に思い切って、仕事を忘れてじっくり休養した方が経過が良いということが分かっています。できれば、最低2ヶ月ぐらいの期間が必要です。休職中は、その間は何もせず、文字通り休んでいる必要があります。旅行やカラオケなどの気晴らしは、健康な人には気分転換になるかもしれませんが、うつ病の方には一番苦痛なことです。うつ病は基本的にエネルギー不足の病気であって、これらの気晴らしは、ガソリンが切れかかっている車で、長距離ドライブに出かけようとするようなものです。
あくまでも、何もせずにいるということが基本です。何もしないことによって治るということは、ちょっと理解し難いことかもしれませんが、エネルギー不足の病気であるうつ病治療の根幹となるものです。うつ病治療のもう一つの中心は、薬物療法です。うつ病の治療薬を抗うつ剤といいます。うつ病が脳の病気である以上、抗うつ剤は、大変効果のある薬と言って良いと思います。
抗うつ剤の効果はすぐに現れるという訳でありません。効果が現れるまでに2〜3週間かかります。3〜6ヶ月間の休養と内服で、80%ぐらいの方がよくなると言われています。最大限の効果が出てから、その投与量を維持します。
精神療法は、心理的精神的の側面からアプローチする治療方法です。カウンセリングや対人関係療法・認知療法、行動療法などがあります。

その他の治療法
昔から、患者に強い刺激、ショックを与えるとうつ病が治ると言われてきました。これを医学的に行うのが電気ショック療法です。電気刺激療法は100ボルト前後の電流を頭に通電し、けいれんを起こさせる治療法です。全身麻酔を施して行われ、肉体にも精神的にも苦痛はありません。日本では、薬で効果がない場合や、自殺企図が強い場合に多く用いられます。劇的な効果を示す場合があり、欧米では大変よく行われています。我が国では実施できる施設が少なく、精神病院で間違った目的で行われた歴史があり、大変イメージが悪いため薬物療法ほど広くは行われていません。ただ劇的に効果があることもあります。光療法は、非常に明るい光を1日に3時間、1週間連続して照射する療法です。ある特定の季節になり落ち込んでしまうタイプのうつ病、季節性うつ病に有効です。安全性が高く、他の治療に効果がない場合に用いられますが、一般的な治療ではありません。
断眠療法は強制的に睡眠を妨げることによって、抑うつ改善をもたらす治療法です。徹夜させる場合や一定時間眠らせた後、無理矢理起こすなどの方法があります。副作用がほとんどないのが特徴です。一部の人しか効果がない、お医者や看護師の負担が大きいという理由で、一般的な治療法ではありません。
うつ病の経過
3〜6ヶ月間の休養と内服で80%ぐらいの方がよくなります。 うつ病は半年程度で、必ず治ると書いてある本が多いようですが、決してそうでありません。薬を飲んでも20%程度の人が2年以上うつ症状が継続すると言われています。うつ病は再発しやすい病気です。50%程度の人は再発し、2〜3回の再発が少なくないと言われています。再発率は薬を続けて飲むことで下げられるということが分かっています。症状が安定してから半年から1年間は同じ薬を飲み続けたほうがよいと言われています。
うつ病は心の風邪と言われていますが、風邪のように何もせず治るのではなく、専門的な治療が必要です。治る可能性の高い病気ですが、3〜6ヶ月程度の休養と長期間の抗うつ剤服用によって治療する病気です。薬をやめると再発の可能性も高いので、注意が必要です。

▼ この記事の著者

下村 洋一
医師、日本医師会認定産業医、労働衛生コンサルタント
日本大学医学部卒業後、駿河台日本大学病院内科に勤務。東京都がん検診センター消化器科での勤務を経て、銀座菊池病院、京王電鉄診療所と内科医長を歴任。その後、京王電鉄グループ専属産業医となる。1997年には京王百貨店診療所所長を務め、2000年に労働衛生コンサルタント事務所を開業。現在では、大手企業や中小企業の嘱託産業医を多数務める。


