著者:下村 洋一(医師、日本医師会認定産業医、労働衛生コンサルタント)
新入社員をうつから守るには
ゆとり教育で育った若い社員はある面、精神的にとても繊細な部分があります。産業現場でも職場不適応型のうつ病が増え、年々メンタル不調が前倒しに発症しています。入社一週間でうつになったという相談も何件か寄せられています。若い社員を不用意に怒鳴ったり、物を投げたりすると、新型うつを引き起こすこともありますので、管理職などラインに対するパワハラ・セクハラ教育は大事です。仕事に慣れる前に、まず新しい環境に慣れる
新入社員が仕事に慣れる前に、環境・会社に慣れてもらうことが重要です。ご両親と離れて一人暮らしとなると、衣・食・住・文化習慣等の環境が変化し、健康な若い人でも心身に何らかの影響を受けます。特に、生活が不規則になると、心身とも体調を崩しがちになります。そこで種々の変化に早く慣れ、健康を維持するためには、まず規則正しい食事、睡眠、運動等の生活リズムをつくることを心掛けることです。睡眠は特に重要です。不眠はメンタル不調の引き金になることがとても多いのです。仕事に慣れるまで残業はさせず、早寝・早起きの習慣をつけてもらうことが必要になります。遅刻は厳禁です。また、喫煙期間が短いほど禁煙は容易です。禁煙教育も是非実施してください。移り住んだ土地の習慣・文化に溶け込むことも大切です。会社に慣れ、社会人としての心構えを持つ
新しい生活環境に慣れるとともに、会社に慣れることもとても大事です。会社とは利益を追求する社会集団です。当然ビジネスパーソンには協調性と強い精神力が要求されますが、日本は学生への基本的な職業教育が十分とはいえません。私はこれが、職場不適応型の新型うつ増加の大きな原因だと考えています。ゆとりのある学校から、生き馬の目を抜く会社に生活の場が移る訳ですから、体調を崩すのは当然です。若い社員のうつを防ぐためにはできるだけ早くからストレス耐性を高め、社会人としての心構えを身につけてもらうことが必要になります。学生時代の甘い考えを徐々に修正し、社会人としての心構えを身につけてもらうことはとても大事です。整理・整頓・清潔・清掃・躾、いわゆる、5S教育やビジネスマナー教育を徹底することが必要です。内定研修の段階からの職業教育実施も有効でしょう。ゆとりを持って育てる
早く仕事に慣れて、戦力になって欲しいという気持ちは理解できますが、環境や会社に慣れていない社員にはこうした考えは大きなストレスです。研修中や、配属直後にストレスが潜んでいることが多いと思います。温厚なベテランの社員が時々声をかけて悩みを聞くようにすると、ガス抜きになるはずです。また、悩み相談には、ピースマインド・イープのカウンセリングサービスも是非ご活用ください。最近の若い社員は、優秀ですがとても繊細な部分も兼ね備えています。ゆとりを持って育ててれば、大きく育つ人材です。組織全体において、新入社員をうつにしないような取り組みを行っていってください。
▼ この記事の著者

下村 洋一
医師、日本医師会認定産業医、労働衛生コンサルタント
日本大学医学部卒業後、駿河台日本大学病院内科に勤務。東京都がん検診センター消化器科での勤務を経て、銀座菊池病院、京王電鉄診療所と内科医長を歴任。その後、京王電鉄グループ専属産業医となる。1997年には京王百貨店診療所所長を務め、2000年に労働衛生コンサルタント事務所を開業。現在では、大手企業や中小企業の嘱託産業医を多数務める。


