著者:下村 洋一(医師、日本医師会認定産業医、労働衛生コンサルタント)
セルフケア
メンタルヘルス対策を進める上で、もっとも大事なのがセルフケアです。自分のストレスをしっかりとマネジメントして、手に負えないと感じたら、家族や上司、専門医のアドバイスを自主的に受け、必要があれば治療を徹底しその上で就業する。自分の健康管理は自己管理が原則です。当然ビジネスマンには協調性と、柔軟な対処能力、強い精神力が要求されます。ゆとり教育で育った若い社員はとてもひ弱と言われますが、できるだけ早くからストレス耐性を高め、社会人としての心構えを身につけて貰うことが必要になります。上手なストレスマネジメントの仕方を教育し、自分の心は自分で守るという意識と能力を高めるようサポートしてください。
ラインによるケア
ラインによるケアも非常に大事です。特に、メンタル不全、精神疾患は上司の対応によって発現したり、状態が左右されやすくもあります。管理監督者がメンタルヘルスの考え方や、うつ病や精神疾患の基礎的な知識と対応方法を知らないと、労災につながる危険性が高まります。 体調に応じた仕事を臨機応援に割り振り、自分が部下のメンタル不全、精神疾患の原因にならないよう注意する必要があります。プレイングマネジャーが多くなり、こうした配慮ができない管理職も多くなっています。管理職に対するメンタルヘルス教育、特に、過重労働問題、パワハラ・セクハラに関する教育は、とても重要です。管理職への計画的な研修等適宜実施し、意識付けをしてください。事業場内の産業保健スタッフ等によるケア
若い社員は、些細な仕事のストレスが引き金になって、メンタル不全を引き起しがちです。放置すると悶々と一人で苦しみ、病気を悪化させてしまいます。人柄の良いベテラン社員を相談役につける、経営者が定期的に面談する、といった精神面でのきめ細かいフォローが必要です。 衛生委員会の役割も重要です。議題は、ノー残業デー、禁煙、4S(整理・整頓・清潔・清掃)、挨拶、コミュニュケーションの向上といろいろあります。これらは皆メンタルヘルスの向上に繋がります。 仕事の内容、人間関係がメンタル不全の発現、悪化の引き金になることも少なくないので、産業医が人事と連携してカウンセリングを行うことはとても大切なことです。 是非メンタルヘルスに関して気軽に相談できる専門医や、復職プログラムを作成できる産業医を確保することをお勧めします。メンタルヘルスの基礎知識
外部機関では、専門医との連携も必要です。医療機関における診療科目の違いを理解しましょう。 精神科と神経科には大きな違いはありません。精神科だと抵抗を感じる人のために神経科と言い換えている場合もあります。これらは主にうつ病や神経症、統合失調症などに対応しています。また心療内科は、胃潰瘍や気管支喘息、高血圧、心身症など、ストレス関連の病気を主に扱っています。 ストレスによるメンタル不全が考えられるときは、まずは、心療内科医の診療をお勧めします。手に負えないと感じたら、家族の協力のもと、まず産業医との面談を設定し、専門医を紹介してもらう方法があります。また、社内の産業保健スタッフ、人事労務部門では、日頃から、精神科、心療内科、メンタルクリニックといった医療機関がどこにあるのか、評判のよいところはどこか、確認しておきましょう。
▼ この記事の著者

下村 洋一
医師、日本医師会認定産業医、労働衛生コンサルタント
日本大学医学部卒業後、駿河台日本大学病院内科に勤務。東京都がん検診センター消化器科での勤務を経て、銀座菊池病院、京王電鉄診療所と内科医長を歴任。その後、京王電鉄グループ専属産業医となる。1997年には京王百貨店診療所所長を務め、2000年に労働衛生コンサルタント事務所を開業。現在では、大手企業や中小企業の嘱託産業医を多数務める。


