著者:下村 洋一(医師、日本医師会認定産業医、労働衛生コンサルタント)
専属産業医と嘱託産業医
1000人以上の事業所は、その会社に所属する医師を産業医として選任しなくてはいけません。つまり、医師を社員として雇用しなくてはいけません。日本には1000人程度の医師が専属産業医として活動しています。50人から999人の事業所に関しては、非常勤の産業医の選任が義務づけられています。日本では、3万人程度の嘱託産業医が活動しています。事業所の規模について
50人以上の事業所には、産業医の選任義務があります。派遣社員に関しては、常時受け入れている社員数、アルバイト、パート社員に関しては、正社員の4分の3以上の就業している社員数を追加して計算してください。事業者は社員ではないので、役員は計算からはずしてください。1つの事業所であるか否かは場所的な観念から決定されます。同一の場所にあればひとつの事業所として、場所的に分散されていれば、原則的に別の事業所です。5000人の社員がいても事業所が分散され、50人以上の事業所がなければ、その会社には産業医は法的には必要ありません。
業種もその業態によって個別に決められます。例えば、製鉄業は製造業ですが、本社はその他の事業になります。工場は1種衛生管理者が必要ですが、本社は2種衛生管理者の選任で問題ありません。 正社員の数が10人であっても、派遣労働者を常時40人受け入れていれば合計50人になり、その会社は産業医、衛生管理者の選任、衛生委員会の開催が必要です。
産業医の資格
産業医には資格があります。以前は、医師であれば誰でも産業医になることができましたが、平成8年から資格が必要になりました。 産業医になるためには、医師免許のほかに、日本医師会認定産業医または、労働衛生コンサルタントの資格が必要です。ここが違う医師と産業医

産業医の職務
産業医の仕事というと健康相談と考えがちですか、マンネリ化しやすく、案外相談件数が少ないのが実情です。 職場環境の改善、労災の防止、過重労働対策、メンタルヘルスといった問題も産業医の大きな仕事です。 会社の実情を知ってもらう為にも、職場巡視を励行し、来社時に衛生委員会を開催し、社員の生の声を聞いてもらうことをお勧めします。 健診が終わったら一通りチェックをお願いし、要所見者に対する面談を設定し、必要に応じ、病院を紹介してもらったり、先生の診療所でみてもらうといいでしょう。 労働衛生週間にあわせ、社員を集めて講演会を開くと先生の紹介PRになり、健康相談も増えると思います。 病後の復職者には必ず面談し復職が妥当か判断してもらってください。 メンタルヘルスに関しても、社員本人だけでなく、部下・職場の問題に関して相談をうけてもらうようにすると会社も助かります。メンタルヘルスと産業医
最近、メンタルヘルスが問題になり、精神科医を産業医に迎えたいと考えている会社が増えています。 眼科・婦人科・整形外科の産業医も少なくないので、それ自体悪いことだとは思いません。 注意しなくてはいけないのは、メンタルヘルスができない精神科医もいるということです。 精神科医を産業医にすれば、問題は解決すると単純に考えると失敗します。 内科医であってもメンタルヘルスに対応できる医師を探す方が、よかったという会社も少なくありません。 困った時に診療してもらえるというメリットを期待している会社も多いようですが、診療したら医師は 患者さんの利益に反することはできません。 産業医は就業に関する「ファイナルアンサー」を出す責任があるのです。ある横綱の主治医の診断が問題になりましたが、主治医と産業医を分けて考えないと大きなトラブルになる可能性があります。精神科医は顧問医、内科医を産業医と分けて考えると費用はかさみますが問題は解決します。産業医の上手な活用法
優秀な産業医が来社しても、会社がしっかりとしたタイムテーブルを作って仕事の段取りをつけていかないと有意義な産業医活動はできません。 会社として産業医に何を求めるかしっかり整理しておくことが大事です。 職場巡視なくして、産業保健なしと言われているほど、職場巡視は産業医活動のなかで一番重要なものです。 小さいオフィスでもあっても社員がどんな環境で、どんな仕事をしているか理解してもらうためにも、職場巡視は大変重要です。▼ この記事の著者

下村 洋一
医師、日本医師会認定産業医、労働衛生コンサルタント
日本大学医学部卒業後、駿河台日本大学病院内科に勤務。東京都がん検診センター消化器科での勤務を経て、銀座菊池病院、京王電鉄診療所と内科医長を歴任。その後、京王電鉄グループ専属産業医となる。1997年には京王百貨店診療所所長を務め、2000年に労働衛生コンサルタント事務所を開業。現在では、大手企業や中小企業の嘱託産業医を多数務める。


